
ケガや病気で突然まとまった治療費が必要になる場合や美容整形やレーシック、脱毛などのエステサロンで高額な費用が見込まれる場合があります。病院やクリニックをはじめ医療を受けるとき、健康保険が使えないこともあるため、全額を支払うのは難しいケースも多いはずです。
そんなとき高額な医療費を用意するのに医療ローン(メディカルローン)と呼ばれるものがあります。
医療ローンは病院やクリニックで受ける医療行為に対して利用できるクレジットローンのことです。「カードローンやフリーローンの医療版」というふうにイメージすればわかりやすくなります。
医療が多様化するなか、医療ローンはその必要性が高まっています。治療中にお金の心配をすることなく入院や通院に専念できるため、かけがえのない健康や美容を追求するのに大変役立つローン商品です。
一方で、割高な金利や厳しい審査基準など、医療ローンならではの注意点も指摘されています。
ここでは医療ローンのポイントをご紹介しながら、そのメリットやデメリット、申し込みの際の注意点などをまとめていきます。
医療ローンとは
病院やクリニックなどで医療を受ける際にまとまった金額を借り入れできる商品を医療ローンと呼んでいます。
現代医療は単にケガや病気を治すといったレベルにとどまりません。美容整形やインプラント歯科治療、レーシック手術など、健康保険の枠外でありながらより快適に暮らせる治療法が次々と登場しています。また、脱毛や薄毛治療といった分野でも医学的な技術が進歩しており、病院やクリニックで受けられるようになりました。
他方、保険が適用されず自由診療の扱いとなる先進技術医療や入院や通院が長期化した際の治療費はときに家計を揺るがしかねない金額です。
こうした日常的な通院や入院とは違って高額な治療費が見込まれる場合に治療中の医療機関で申し込めるのが医療ローンです。医療ローンは主に信販系のクレジット会社の商品で、提携先の病院やクリニックを通して審査を受け付けてくれます。
健康保険と高額療養費制度
日本では自営業者や学生などの国民健康保険やサラリーマンの社会保険によって病院やクリニックでの窓口負担額が低く抑えられています。
ただ、あくまで健康保険制度の治療の範囲内である必要があります。自己負担額は原則3割負担ですが、入院や治療内容によっては高額になるおそれがあります。そんなとき、国が一定以上の医療費を負担してくれる制度がああります。高額療養費制度です。
高額療養費制度のおかげでもし治療費が数十万や数百万になったとしても健康保険内なら約9万円しか支払わなくて済むようになっています。
それでは、なぜ健康保険に高額療養費制度があるにもかかわらず、医療ローンが存在するのでしょうか。治療内容によっては健康保険の適用外の医療行為になる場合があります。自由診療と呼ばれていて、健康保険が使えないため全額自己負担しなければなりません。
自由診療には、がんや脳や心臓疾患での先進医療から美容目的の整形手術、歯科でのインプラントや歯列矯正、眼科のレーシックなど数多く存在します。こうした自由診療を受けたいときはまとまった医療費が必要になります。したがって、健康保険が使えないため医療ローンを利用してまとまったお金を用意しなければならないのです。
医療ローンのメリット・デメリット
美容整形をはじめ健康保険が適用されない治療を受けたいときまとまったお金を用意できる医療ローンにもメリットとデメリットがあります。
医療ローンのメリット
すぐに治療が受けられる
美容整形や歯列矯正、レーシックなど、主に美に関する医療を受けたい人の中には頑張って貯金をしている人も多いようです。しかし、数十万円や数百万円単位の医療費となるとお金が貯まるまでになかなかスタートが切れなくなります。
もし、がんの先進医療のように病気の治療に必要ながら健康保険の適用外で高額療養費制度が使えない場合は貯金を待っているわけにもいきません。いますぐにでもお金を用意して自由診療であっても最善の治療を受けたいと考えるはずです。
このように、医療ローンは単に美のための医療行為だけでなく、命に関わるようなケースでもいますぐ治療を開始できるという大きなメリットがあります。
医療機関で申し込める
カードローンを申し込もうと思うと、ホームページで必要事項を入力したり、郵送で申込用紙を取り寄せて返送したりと何かと手間が掛かります。
医療機関が提携している医療ローンなら、病院やクリニックの窓口で申込用紙を記入して提出するだけで簡単に申込の受付を済ませられます。商品の内容について疑問があれば納得するまでその場で気軽に相談できるのも魅力です。
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医療ローンのデメリット
審査に時間が掛かる
カードローンのように使い途が自由なフリーローンと違って、医療ローンは医療を受けるのに限定した商品です。これを目的別ローンといいます。
身近なものにマイホームローンやオートローン、教育ローンなどがあり、多くの人が利用しています。ただ、目的別ローンはカードローンよりも慎重に審査が行われる傾向があり、融資決定まで時間が掛かることがあります。
もし、少しでも早く融資金額で治療を受けたくても、お金を手にするまでの治療費は自己負担になるので注意が必要です。
医療行為にしか使えない
医療行為を対象とした目的別ローンのため、手続きに手間を掛けて審査に通っても融資を受けた金額はすべて医療行為にのみ使えます。カードローンのように事業性資金以外なら何でも利用できるというわけにはいきません。
ローン会社を選べない
受診する医療機関の提携しているローン会社があれば、他のローン会社を選ぶことができません。金利や返済方法などで他社を希望しても医療ローンはあきらめなければならなくなります。
転院が難しい
医療機関が提携しているローン会社の医療ローンを使うと、基本的に治療が終わるまでその病院やクリニックで治療を進めることになります。
もし途中で他の病院に移りたくなっても、医療ローンが足かせとなってスムーズに転院するのは難しいといえます。さらに、もしどうしても転院したいとき、現時点で借り入れているお金を一括返済しないと解約できないケースもあります。
金利で選べない
複数の商品から選ぶことのできるカードローンと違い、医療機関の提携先のクレジット会社を利用するので、割高な金利が設定されていても選択の余地がありません。
手軽に申し込めるからと金利や返済条件の説明をきちんと受けないままでは、後から思わぬ支払いにびっくりしてしまうことがあります。申込の際には必ず商品内容を確認して医療ローンの審査に進むことが望ましいでしょう。
返済困難に陥る可能性がある
命に関わるような病気治療ではなく、美容のため返済を考えずに医療ローンを利用すると完済するのが難しくなることがあります。
病院やクリニックで気軽に勧められたとしても医療ローンは銀行や消費者金融からの融資と同じです。返す目処がつかないのであれば返済計画をきちんと立ててから利用するようにしてください。
医療ローンの審査は厳しい?
目的別ローンの一種である医療ローンは審査が厳しいという声が聞かれます。実際に医療ローンのハードルは高いのでしょうか。どのようなポイントを審査でチェックされるのかを見ていきましょう。
審査基準
医療ローンの審査基準にはいくつもの項目があります。申込用紙に記入した内容をもとに、クレジット会社の審査担当社が精査します。
返済能力
次のような項目から申込者が融資した金額を完済できるか判断します。
安定した収入
収入が多い少ないよりも「安定的」に収入を得ているかがポイントです。
今月は月給30万円でも来月10万円のように収入が月によってまちまちでは、毎月の返済が行われるか融資する側も心配になります。医療ローンでは毎月決められた額を継続して返済していけるかどうかが大切です。
したがって収入が安定している会社員やOLはもちろん、派遣社員やパートでも利用できる可能性が十分にあります。
勤務先・勤続年数
中小企業よりは大企業や官公庁のほうが審査がプラスに働きやすい傾向はあります。ただ、安定した収入が確認できれば、本当にその勤務先に勤めているかの裏を取るために記入欄があると考えていいでしょう。
勤続年数は長いほどポイントが高くなります。何度も転職を続ける人より長く同じ職場で働いている方が確実に返済してもらえる可能性は高いと判断できるからです。
他社借入状況
他社で多額に融資を受けていたり、借り入れ先が多いと返済能力が低く見られてしまいます。
また、クレジット会社の医療ローンでは貸金業法の総量規制が関係するため、他社からの借り入れを含めて年収の3分の1までしかローンの利用ができません。
したがって、もし他社からも借り入れをしていて医療ローンを利用すると年収の3分の1を超えるようなら利用はできないと考えていいでしょう。ただ、総量規制は銀行のローンは対象外のため、銀行による医療ローンであれば借り入れできる可能性があります。
ブラックリスト(金融事故歴)
これまで返済を延滞したことがあったり、債務整理や自己破産など法的に借金を整理した経験がある人、いわゆるブラックの場合、医療ローンの審査が厳しくなります。きちんと最後まで返済してもらえるかを考えると、どうしても過去に返済でトラブルがあった申込者は返済能力が乏しいと考えられるためです。
住まい
医療ローンのようにクレジット会社の融資なら、一戸建てで自分または家族名義の住宅を持っているとポイントが高くなります。ただもちろん分譲や賃貸マンションであっても審査において低く扱われるわけではありませんので安心してください。
年齢
20歳以上の成人であることが求められます。医療ローンでは18歳以上の未成年者の場合、保護者の同意があっても申込はほぼ厳しくなっています。
医療ローンに必要な書類とは
医療ローンではカードローンよりも必要な書類が増える傾向があります。必要書類の多い病院やクリニックの医療ローンの場合、次のような書類の用意が必要です。
- 本人確認書類運転免許証など
- 所得証明書収入証明書、源泉徴収票、納税証明書など
- 資金使途確認書病院やクリニックが発行する書類で、融資金額を医療行為にのみ使用すると証明するもの
なお、湘南美容外科クリニックの医療ローンのように、本人確認書類や銀行の通帳(キャッシュカード)と届出印だけで申し込めるクリニックもあります。
このように、所得証明書や資金使途確認書といった煩わしい書類の用意がなく窓口で申し込むだけで審査を受けられる医療ローンもあります。
医療ローンの審査に落ちないための方法は?
医療ローンの審査を行うのはあくまで商品を提供しているクレジット会社です。
いくら病院やクリニックと提携していても融資を受ける以上、審査は公平に行われます。もし高額な治療や手術を受けるからといって病院やクリニックによる口添えや審査で便宜を図るといったことはまずありません。
それでも、審査に通る可能性を高めるためにできることは残されています。
安定した収入と勤続年数を伸ばす
医療ローンの審査では正社員か派遣社員といった雇用形態より、たとえパートやアルバイトでも毎月決まった収入があってできるだけ長く働いているほうを重視します。
もし実際に医療ローンを利用するまでに時間があるのなら、収入を安定させてから申し込むとよいでしょう。
他社からの借入を減らす
年収の3分の1までしか借り入れできない総量規制に引っかかる人は、他社からの借り入れをある程度返済してから審査を受けることをおすすめします。
もし、総量規制に掛かるとわかっていて申し込んでも審査に通ることはまずありません。しかも、一度一社のクレジット会社の審査に落ちてしまうと、半年は他社からの借り入れも難しくなります。
医療ローンとカードローンの違い
医療ローンと比較して検討される商品にカードローンがあります。
カードローンは広く利用されているローン商品で、消費者金融や銀行から使途自由の融資を受けるサービスです。保証人や担保を用意する必要もなく。初回なら30万〜50万円程度、収入や利用履歴によっては100万円単位で利用できる魅力的なローン商品です。
医療ローンはイメージ以上に審査が厳しく、金利が割高なケースも珍しくありません。
病院やクリニックできちんと説明を聞かないまま申し込んで融資を受けてしまってから「思っていたより返済金額が高い」「返済回数が少なくて返すのが大変」という事態に陥っても遅いのです。
カードローン
美容外科や眼科などのうち、大手の病院やクリニックでは提携している医療ローンの場合、完済までの金利をすべて負担してくれるところがあります。
また、金利優遇のキャンペーンを積極的に行っている医療機関も見られます。こうした医療機関なら、医療ローンを利用するのがおすすめです。
ただし、審査に時間が掛かる医療ローンより命に関わるような医療行為を受けたいのなら審査がスピーディーで金利も選べるカードローンが得策かもしれません。融資が早いため、病院やクリニックの支払いをすぐにスタートできます。
さらに、カードローンは医療ローンより審査に対してそれほど敏感になることなく申し込めます。医療ローンに比べると、職業が専業主婦や学生であっても安定した収入があれば、十分に利用可能だからです。
その点、医療ローンは正規雇用の会社員のみ審査の対象としていたり、カードローンより安定した収入の条件が厳しい傾向があります。
クレジットカード
大きな病院はもちろん、クリニックでもクレジットカードで医療費を支払うことができる窓口が増えてきました。とくに美容整形やレーシックを得意とする眼科ではクレジットカードが利用可能なクリニックは珍しくありません。
湘南美容外科クリニックでは以下のクレジットカード(一部)が利用でき、支払い方法もカードごとに複数から選択ができるようになっています。
使用できるカード | 翌月一括払い | ボーナス一括払い | リボ払い | 分割払い (回数指定) | 2回払い |
---|---|---|---|---|---|
VISA | |||||
MASTER | |||||
JCB | |||||
アメックス | |||||
ダイナース |
※ここで掲載した使用できるクレジットカードは一部です。詳細は湘南美容外科クリニックの公式サイトをご覧ください
湘南美容外科クリニック「お支払い方法」
クレジットカードは、手持ちのカードで簡単に決済できる便利さはありますが、金利面では医療ローンやカードローン以上に割高な返済となってしまいます。多くのクレジット会社のショッピング手数料は年率15%前後のため、利用額や返済回数によっては完済まで高額な手数料を支払い続けることになります。
また、クレジットカードが利用できないからとキャッシング枠を使うことや返済をリボ払いにしてしまうと、手数料はどんどん膨らんでいきます。
病院やクリニックで高額医療を受けるのであれば、クレジットカードではなくまず医療ローンやカードローンが利用できないかを考えるのがベターです。
社会福祉による貸付制度
各自治体の社会福祉協議会(社協)では、低所得者や障害者、高齢者世帯といった社会的弱者に対して生活福祉資金を貸し付けるサービスを行っています。
医療行為で利用できるのは「福祉資金」で原則170万円までです。健康保険の高額療養費制度でも賄いきれない医療費などをカバーするのに役立ちます。金利も無利子または年1.5%です。
一方で、生活福祉資金貸付制度は連帯保証人が必要であるほか、あくまで生活が困窮している世帯に対する貸付のため、美容整形やレーシック手術といった生命に関わらない医療行為には利用できません。
病気やケガでの医療費ではなく、あくまで美容のための医療行為を受ける場合には社会福祉貸付制度は使えません。医療ローンやカードローンを選ぶことになります。
先ほども書きましたように、この生活福祉資金貸付制度の実施主体は都道府県社会福祉協議会となっております。相談は下記リンク先に載っている社会福祉協議会で行なってください。
福祉資金でも、「緊急小口資金」という緊急かつ一時的に生計の維持が困難になった場合に利用できる貸付があるのですが、この貸付に関してはこちらの記事に詳細が書いてありますので参考にしてみてください。
カードローンも選択肢に入れよう
社会全体の意識変化のなかで、美容整形やレーシック、脱毛など、病院やクリニックで医療を受けるのにまとまった金額が必要な場合が増えています。また、患者に利用してもらいやすいように、クレジット会社と提携して医療ローンを扱っている医療機関が増えているのも事実です。
しかし、医療ローンは治療を受ける医療機関で手軽に申し込めて、そのまま高額な医療行為を受けられるメリットがある反面、金利が割高で審査が厳しいこともあるなど、デメリットも存在します。
医療ローンはあくまでクレジット会社が提供しているローン商品です。信販会社や消費者金融、銀行からの借り入れと同じですが、目的別ローンであるためにかえって利用しづらい場合もあります。
医療機関で医療ローンがあるからといって必ずしも利用しなければならないというものではありません。
むしろ一般のカードローンを使うほうが、さまざまなローン会社から金利や返済方法を選べて、有利にまとまった金額の医療費を用意することができます。
がんの先進医療や長期入院で医療費がかさむといった場合は医療ローンもいいでしょう。ですが、ある程度時間に余裕があって少しでも金利面や審査面でメリットを求めたいのであれば、医療ローンと合わせてカードローンの申し込みも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
きっと、医療ローンとは違ったメリットが見えてくるはずです。